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マゲ着けて 江戸行くつもりが 世界一周1

寿司が産まれる頃

1793年。
酢飯とマグロが奇跡の出会いを果たそうとしている、江戸時代ど真ん中。
丁度、徳川家慶が12代将軍になる頃。

若宮丸 は、木材やら米やらを乗せて、風に乗って南へ向かっていた。

若宮丸は宮城県石巻の海運業者の船。
石巻-江戸間ばっかりを行き来していた。
もちろん、この時も、石巻から江戸へ向かっていた。

今は11月。風がちょっとアゲインストな季節。
でも大丈夫。
だって、石巻-江戸間ばっかり行き来しているから。

この辺の天気や海流は、隅から隅まで把握している。
石巻-江戸間なら、オレたちの右に出る船乗り、フナライダーはいない。

若宮丸は、逆風の時には泊まり、順風の時には進んだ。

この前年、 大黒屋光太夫 という伊勢のフナライダーズでリーダーだった男がロシアから帰国していた。

なんで「太夫」という、日本から離れてはいけない刻印のような名前を持つ男がロシアからやってきたのか。
それは、大黒屋光太夫が江戸に向かう途中に嵐に遭い、 アリューシャン列島のアムチトカ島 まで流れて行ってしまったことから始まった。

アリューシャン列島

そこで現地の アリュート人 に助けられ、たまたま来ていた ロシア人 に連れられてモスクワまで行き、帰りたいとロシア皇帝に泣きついた結果、遣日使節 アダム・ラスクマン に連れられて帰ってきたのだ。

この時代、アラスカやアリューシャン列島の辺りには、ロシア、そして イギリスのハドソン湾会社 が進出し、現地人と交易していた。

主な目的は毛皮。
現地民からテン、キツネ、ラッコ、ビーバーの毛皮を購入し、布や金属製品、食料、嗜好品などを渡していた。
また、銃やワナなどの道具による新しい狩猟方法や宗教などの文化、病気などもこの地に持ち込んだ。

衝撃的な影響を与えたのは、アリューシャン列島の北にある、セントローレンス島。
ここには、イギリス人が1720年代に進出した。
そしてここに住んでいた イヌイット に酒をもたらした。

この地のイヌイット達は、交易により、はじめて酒という素晴らしい飲み物を知った。
そして、酒盛りに明け暮れるようになった。
翌年、イギリス人が来ると、ほぼ全員餓死していた。
酒に明け暮れて漁をしなくなってしまった結果らしい。

そんな中でロシアから帰ってきた大黒屋光太夫。

同じフナライダーである若宮丸のライダー達は、もちろんその話を知っていたはず。

「素人が遠出するからこういう目に遭うんだ。江戸行こうとして謎の島行っちゃうとか、どんだけヘタクソなんだよ。」

そんな会話をしながら進んでいたに違いない。

若宮丸、想定外の旅立ち

北風の中、福島辺りを進んでいると、突然風が南風に変わった。
波も高くなっている。

若宮丸は陸の方に舵を切った。

「進めないから仕方ない。今日は福島で酒盛りだ。ウニ、カニ、酒、ウニ、カニ、酒の三拍子ワルツを奏でるゾ。」

そんな感じで港へ向かっていると、そこに大波が襲いかかった。

「おっとっと」
若宮丸は言った。

ライダー達のハンドリングもあり、なんとか大波をやり過ごした。
でもなかなかスリリングな波。
はやく戻らないと。

ライダー達は、船の向きを変えようとした。

「ちょっ、待てよ。」
一人のライダーが言った。

船の向きが変わらない。
船がハンドルさばきに反応しないのだ。

「ちょっ、待てよ…」
事態に気づいた別のライダーが言った。

今の波で舵が折れていたのだ。

陸は見えている。
でも舵が無いとハンドリングができない。
もう東風を待つしかない。

若宮丸は、漂い続けた。

待った。
そして、風向きが変わった。
西風に。

終わった。

若宮丸は、太平洋方向にどんどんと流れていった。

漂着と若宮丸の最期

壊れたのは舵だけでは無かった。
船体自体も破損し、海水が流れ込んで来ていた。

船員たちは、水を汲みだしながら、船体を修復した。

海流流れは、最悪ルートでは、 アラスカの西海岸 まで到達する。
そこで折り返し、その先はアリューシャン列島の南側へと流れていく。

若宮丸がそのルートだったかは分からない。
が、半年間漂流し、アリューシャン列島の ウナラスカ島 へ漂着した。

「ちょっ、待てよ。。。」
船員は途方に暮れた。

そこは雪で覆われて、植物的なものが全くない島だった。

船員たちは接岸し、島を何日も歩き回り、人を探した。
誰もいない。

ダメだこりゃ。他の島を当たろう。
船の場所に戻った。

しかし、大事な船がバラバラになっていた。
波で岩場になんどもぶつかり壊れてしまったのだ。

(その2へ続く)

絵でみる 江戸の町とくらし図鑑

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