栄叡、普照 - 唐僧ヘッドハンター

私度僧というカジュアル僧侶全盛の奈良時代

東大寺金堂(大仏殿)

奈良時代の前、飛鳥時代。
丁未の乱(ていびのらん) という仏教と神道の宗教戦争チックな内乱がこの時代にあった。
この内乱で仏教側が勝ってから、大和朝廷は仏教国家となっていった。

奈良時代になると、僧侶の組織が官僚組織の一部になるほど、国と一体化した状態となっていた。

その流れで朝廷は、 坊さんからは税を取りません令 を発していた。

坊さんとなるには、エラい坊さんから 授戒 を受けないといけない。
でも、その時の日本には、 戒律 を垂れることが出来るレベルのエラい坊さん自体いなかった。

そのため、勝手に頭剃って、カジュアル僧侶をキメ込む、 私度僧 という下衆い輩が続出した。

私度僧の中には、 行基 のような立派な僧もいた。
でも、多くは下衆い輩だった。

頭剃って節税対策。
浮いた金で酒と女に費やす。
仏教って素晴らしい。

ヘヴン過ぎる奈良。

興福寺 のエリート坊さん、 栄叡、普照 は、この様子に危機を考えた。
そして、朝廷にこう訴えた。

あかん!こりゃあかんで! もう、唐から授戒ができるエラい坊さん拉致って来るしか!

これは、カジュアル僧侶を減らして税収を増やしたい朝廷の思惑とも一致していた。

そんな感じで、栄叡、普照は、唐のエラい坊さんをヘッドハンティングする係として、遣唐使船に乗りこみ、唐へ旅立った。

唐でのヘッドハンティング業務

Janganmun (Gate) [Hwaseong Fortress / Suwon-si]

長安に来た。

仏教先進国の唐だから、エラい坊さんイッパイいいるハズ!
イッパイいれば、何人かは日本来てくれるでしょ!
まだ時間はイッパイあるし!
とりあえず、観光キツマン、ちゃうしー?

栄叡、普照はそんな感じでノリノリで高僧探しを始めたかもしれない。

が、この時代の唐、 国民の出国は死罪 としていた。
しかも、出国したとしても、難破せず無事に日本に辿り着ける確率は、5割程度。
そんなリスクを負ってまで、見ず知らずの国、日本に尽くすような物好きな坊さんはいなかった。

観光どころではなかった。
5年経っても見つからなかった。

メチャメチャヤバイ!
栄叡、普照は、焦りまくった。

そこにさらに悪い知らせが届いた。

次の遣唐使船、中止。
金足んないから、中止。

唐に取り残される栄叡、普照。
連れて帰る術が無いにも拘らず、僧を探し続けた。

7年目。
栄叡と普照は、ひたすら探しまくった。
高僧・・・ではなく、帰る方法を。
でも、帰る方法も見つからない。
もう見つけたいものが何一つ見つからなかった。

帰るのは、諦めるしかない。
高僧探すしか。。。

2人は、また、高僧を探し始めた。

遣唐使として、唐に来て9年。
やっといけそうな僧が見つかった。

鑑真を口説く

その僧は、 鑑真

鑑真は、当時50代中盤。
千人レベルの弟子を抱え、その弟子の中にも高僧がイッパイいた。

さらには、過去 3、4万人に授戒 を授けたという、正に トップ授戒スト だった。

この坊さんしかいない!

栄叡と普照は、9年かけて培った口説きテクを炸裂させた。

9年探しても1人も引き受けてくれる人がいなかった役目だ。
これを負ってもらうには、並大抵のテクではムリだろう。
しかも、結果として鑑真は、失明しても、栄叡がいなくなっても、日本に行くことに執念を燃やし続けた。

なぜそうなったのか。
どんなテクを使ったのだろうか。

今となっては分からない。

ここで、シンキングタイム。

ボクが考えたテク

鑑真は、沢山の弟子を抱え、すでに唐の仏教界ではかなり高い位置にいた。

でも、既に50代中盤。
他のエライ僧を今からゴボウ抜きは難しい。

さらには、唐の政策。
オフィシャル宗教ランクを、 まず道教、次に儒教、その次に仏教 という順としていた。

鑑真より後の時代になると、国による 仏教弾圧 が行われることもあった。
この時代でも、そうなりそうな雰囲気があったかもしれない。

そんなナンバー3宗教の中にあってもナンバー1ではない。
オレはここまでで死んでしまうのか。

下衆なボクが想像するに、そう思っていたハズなのだ。

そんな悶々とした鑑真の様子を感じ取り、普照が歌い出した。

いつか最高の自分に♪
生まれ変われる日が来るよ♪

後のEvery Little Thingである。

そしてそのBGMの中、鑑真に悪い顔で話しかける栄叡。

日本なら、いきなりナンバーワンでっせ。
やりたい放題でっせ!

これに反応する鑑真。

ほ、ほんまでっか?
でも、唐捨てて日本に行ったら、ワシの名前に傷がつきまんねん。。。

すかさず栄叡が畳み掛ける。

だったらぁ、フランチャイズ展開しちゃえばいいじゃないの。
あんたの弟子、派遣して、日本で寺構えさせればいいじゃないの。
弟子を日本でナンバーワンにさせて、
あんたは唐でその上に胡座かいてればいいじゃないの。

これを聞いた鑑真の顔が晴れやかになった。

あんたホンマに、仏様やぁ。

多分大体あってるはず。

鑑真の決意

鑑真は、弟子達に日本に行く気はないかと尋ねた。
が、そんな物好きな弟子は一人もいなかった。

そこで鑑真は、弟子に向かって言った。

いいの?いいの? じゃあ、ボク行っちゃうよ? よし、ボク行く!

鑑真が日本に行く宣言をした。

すると弟子達が、オレもオレもと手を挙げ出した。

完全なダチョウ倶楽部ロジック。
あとは鑑真が、どうぞどうぞと言えば、完成だ。

栄叡と普照は、この世の者とは思えないほどの悪い笑みを浮かべた。

が、ここで突然、このロジックが破綻した。

鑑真が降りないのだ。
行くと言って聞かないのだ。
となると弟子達も降りない。

よし、こうなったらみんなで行くぞ!

結局、鑑真と21人の弟子達というEXILE級の構成で日本に行くことになった。

いざ日本へ!(1回目)

国にバレてはいけない。
バレて捕まったら死罪だ。

鑑真達と栄叡、普照は、上海の南にある天台山に参詣するとウソをついて出発した。

いざ日本。
鑑真EXILE一行は、長安を出発した。
長江から出港する予定だった。

しかし、事件が勃発した。
鑑真EXILEの中に、偽EXILEがいたのだ。
みんなが行くというから、仕方なく同調したものの、ホントは行きたくない。
そう思った偽EXILEは、唐の役人に密告した。
しかも、鑑真を守るために、

栄叡、普照は、僧ではなく海賊だ。

というウソ情報も付け加えた。

栄叡、普照はとっ捕まり、牢屋にぶち込まれた。

いざ日本へ!(2回目)

栄叡、普照は、4ヶ月後に釈放された。
鑑真は諦めてはいなかった。

鑑真EXILEのメンバーは、何人か脱退したものの、軍用船を購入し、出発した。

が、台風が直撃して座礁。唐へコッソリと戻った。

いざ日本へ!(3回目)

再度準備を整え、鑑真EXILEは出発した。
が、今度は鑑真ファンの密告で栄叡がとっ捕まった。

またもや牢にぶち込まれる栄叡。
渡航は中止するしかなかった。

鑑真は栄叡救出に動きまわった。
結果、栄叡病死という扱いで救出された。

いざ日本へ!(4回目)

もはやいつもの長江からの出航はムリだった。
監視がキビシイ状態となっていたのだ。

そこで、鑑真EXILEは、さらに南の福建辺りから出航することとした。
しかし、ここでも偽EXLILEが唐の役人に密告。

今度は鑑真がとっ捕まり、揚州に送還。
もはやお尋ね者の栄叡、普照は逃げまわり、どこかに潜伏した。

いざ日本へ!(5回目)

栄叡、普照の監視がキビシく、全然身動きが取れない状態が続いた。

第4回から4年後、監視の隙を突いて、鑑真EXILEは出航した。

が、またもや台風。
船は半月も漂流し、海南島へ流される羽目に。

もうボロボロ状態だった。

またもや、唐へ帰還する。

が、ここで体力の限界を超え、 栄叡が死んでしまった

さらには、鑑真も 失明

もう散々な結果となった。

いざ日本へ!(6回目)

栄叡も死に、鑑真も失明。
もうムリか。そう思っていた第5回からさらに5年後。

遂に日本から20年ぶりの遣唐使がやってきた。

最後のチャンス!
ここしかない!
すでに鑑真以外は5人となってしまった鑑真EXILE、そして普照は、遣唐使船に飛び乗った。

こんどこそ大丈夫や!

が、今度はなんと、遣唐大使の 藤原清河 が、障害となった。
藤原清河は、唐に怒られると思い、鑑真EXILEを降ろしてしまったのだ。

しかし、ここで味方も現れた。
遣唐副使の 大伴古麻呂 だ。
大伴古麻呂は、コッソリ鑑真EXILEを自分の船に載せ、バレないようにあの手この手を使って出航した。

遂に日本!

唐招提寺

大伴古麻呂の船は、嵐に遭ったものの、沖縄を経由し、薩摩に到着した。

鑑真EXILEは、大阪、京都、奈良へと進み、行く先々でファンが殺到。まさにEXILEレベルの人気っぷりだった。

そして鑑真は、いきなり仏教の最高指導者のポジションを与えられ、授戒を一任されることとなった。

一方、普照は、東大寺の僧となり、帰国の翌年には僧位も与えられた。

が、この大任を果たした後も、奢ることなく、淡々と東大寺の僧として生きたらしい。 下衆さのかけらもない、素晴らしい男だったようだ。

おそらく、栄叡もそうだったろう。

先頭の文章で、ボクの下衆い想像での鑑真口説きテクを書いたが、
栄叡、普照の下衆じゃないピュアなハートに鑑真は動かされ、日本に来たのかもしれない。

一方で、下衆い想像で下衆い文章しか書けないボク。
お恥ずかしい。

聖徳太子と日本人 ―天皇制とともに生まれた<聖徳太子>像 (角川ソフィア文庫)

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江蘇省006揚州: 「遣唐使」訪れた佳麗の地 (まちごとチャイナ)

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