紀貫之。21世紀に生きるボクらのヒーロー。

歴史上の人物は、大抵、国の中でどういう役割を果たしたか的な視点で評価される。
なんとかの戦で勝ったとか、どんな改革をしたかとか。
歴史は、国が作り上げていくものなので仕方がない。
なので、有名な歴史上の人物のほとんどは、 体制の中でうまいことやっていくか、体制を作り上げる人達 だ。

でも、時代は21世紀。

親のスネをかじり 続けながら、
世界に一つだけの花 」という旗を掲げた船で、
第3のビール 片手に
ネットの海へ 飛び出す時代だ。

そんな時代に生きているボクたちにとって、体制型偉人は眩しすぎる。

そうじゃない型偉人はいないのか。
いる。
芸術家とか科学者とか文人とかだ。
その中でも、ボクたちにピッタリな偉人がいる。それは 紀貫之 だ。

古今和歌集という頂点

photo by Mal B

紀貫之といえば、『 古今和歌集 』。

時代は平安まっただ中。
農業の生産性が上がり、そのアガリで食っていた、そこそこなランクの貴族は更なるヘヴンを求め、風流イズムを洗練させていた。

その中で紀貫之は、 ヒット和歌を連発 して台頭し、貴族たちのハートをグッと掴んでいた。

この頃の天皇は醍醐天皇。
醍醐天皇はこの風流イズムの勢いを感じて考えた。

乗るしかない、このビッグウェーブに!

そして、『古今和歌集』を作れ指令を発令した。トップ歌人となっていた紀貫之は、その選者を任された。

ここが紀貫之の頂点。普通に考えるとそうだろう。

でも、紀貫之はもう一つ業績を残している。
それは『 土佐日記 』。
21世紀のボクらにとって、これこそが紀貫之をヒーローたらしめるところだ。

土佐日記という頂点

『古今和歌集』後の紀貫之は、官位はそこそこ上がるが、仕事をあまり任されない、そんな存在だった。

歌は素晴らしい。歌は素晴らしいが、仕事は任せられない。歌は偉大だから、官位は与える。でも大きい仕事は任せられない。
上司からそう思われていたに違いない。

そんな彼にも、後ろだてとなる上司はいた。 藤原定方藤原兼輔 だ。そこから仕事をもらい、食いつないでいた。

そして、56になり、彼は 土佐に転勤 する。

もっと京都で風流したい。
でも、金が無い。
京都には金になるポストが空いてない。
紀貫之は、泣く泣く土佐へ転勤していった。

そして4年の土佐勤務の後、後任が決まり、彼はやっと京都に戻ってきた。
しかし後ろだてとなっていた2人は既に亡くなり、またもや無職状態となった。

この頃、紀貫之は60歳だった。この時代の60歳といえば、相当の爺さん。

紀貫之。60歳。無職。コネ無し。
どうする。

ここから、21世紀に生きるボクらにとっての 紀貫之の頂点 が始まる。

ここで彼は、筆を取った。

そして、 史上初のひらがな の、 史上初の女のフリをした 文学が生まれる。
それが、『 土佐日記 』だ。

紀貫之。60歳。無職。コネ無し。オカマ。

ちゃんとした文章とは、オール漢字で、肩を張って、仰々しい感じで書くものだったという常識を、オカマ口調でぶち破った。

それだけではない。この『土佐日記』で彼は、愚痴と下ネタを散りばめまくった。
史上初の下衆の極み だ。

この作品は、平安貴族の間で大ブームを起こし、その後の『 源氏物語 』や『 枕草子 』などの平安女流文学のベースとなった。

60歳・無職・コネ無しからの、オカマ・下衆の極み。そしてそれが『源氏物語』や『枕草子』へとつながっていく。
正にボクらのジャパニーズ・ドリームを実現した、下衆なヒーローだ。

土佐日記(全) ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)

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古今和歌集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫)

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