ウホーリーに探される−9話.恐怖夫婦

ヤツの企みは、無惨に砕け散った。

が、オレは既に力尽きかけていた。
身動き一つ出来ないオレの視線の先に、1人の人影が現れた。

両親共に行司、そして3人の姉も全員行司という家庭に育ったオレは、それが誰だか遠くからでもすぐに分かった。

「僕らの琴九州・・・」

助かった。オレはそう思った。

近づいてきた僕らの琴九州は、羨望の眼差しで見つめるオレを、枯れ木を踏むようにバキバキッと踏み越え、大好きな日サロに入って行った。

ぐったりしたオレの前に、1台のトラックが止まった。

中から、近未来風デザインの全身つなぎとフルフェイスヘルメットを着用した5人組が降りてきた。

5人はそれぞれ色違いの格好をしていた。
赤、青、緑は、最初にオレ、次にオレと共に交差点で散っていった仲間達を、次々にトラックの荷台へ投げ入れていった。

桃は、その場に交換用トイレットペーパーを人数分置いた。
黄は、運転席に残り、赤を轢くタイミングを伺った。

任務が完了し、残りの4人も飛び乗ると、黄は仕方なくエンジンをかけ、マイクに向かって、いつもの名調子を開始した。

「町内のー皆様。毎度ーお騒がせーしております。ちり紙ー・・・」

その時、1台のトラックが5人組のトラックの前をふさいだ。

「ヤバい!ライバル業者だ!」
黄はマイクで叫んだ。

そのトラックから、中年夫婦が降りてきた。
中年夫婦は、物凄い乱暴な手つきで荷台からオレ達を引き摺り降ろしにかかった。

「オレ達が先に拾ったんだぞ!」
赤がマイクで叫んだ。

「そうだ!そうだ!」
4人がマイクで叫んだ。

「交換用のトイレットペーパーも、置いちゃったんだぞ!」
赤がマイクで叫んだ。

「そうだ!そうだ!」
4人がマイクで叫んだ。

「こんな不正が許されていいのか!?この国に正義は無いのか!?」
「そうだ!そうだ!」

「裁判で決着つけたいのか!?」
「そうだ!そうだ!」

中年夫婦は、既に全員を自分のトラックに移し、運転席に乗っていた。

「前よーし、後ろよーし。」

お父さんは、前後の確認を完璧にこなし、猛スピードで発車した。

トラックは順調に進んだ。
停車したら、頃合いを見計らってなんとか脱出し、早く病院で治療しよう。オレはそう思った。

トラックは、精肉所に到着した。

中年夫婦は、効率良くオレ達をベルトコンベアに乗せようと、自らベルトコンベアに乗って、荷台から引き摺り降ろす方法を取った。

「あっ。」

中年夫婦は、ベルトコンベアに流されていった。

「今だ!」

オレ達は、体毛を前後に振るわせて進み、蚊のような速さで、運転席に飛び乗った。

そして、 右手が折れていない吉田さんがハンドル担当。
左手が折れていない武田さんがギア担当。
右足が折れていない飯田さんがアクセル・ブレーキ担当兼任。
左足が折れていない野田さんがクラッチ担当。
目頭が熱いオレが障害物確認担当。
重低音ボイスのヤツが全体の指示出し担当。

という布陣で、このトラックを出発させた。

つづく

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